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1.基本的 Q&A
Q.安保法制の違憲を争うのに、どうして慰謝料を請求するのですか?
A.現在の裁判の仕組みでは、法律の違憲そのものを直接争うことはできません。そのため、慰謝料請求をし、その理由として安保法制の違憲を主張することになります。
. ぜひ別ページの「素人の素人による素人のための裁判案内」という記事を読んでみてください。
Q.原告にはなれないけれど、この訴訟を応援したいです。
A.サポーターを随時募集しております。法廷傍聴、資料や情報提供、カンパなど様々な形でのご支援ご協力をお待ちしています。 このページの最後 に案内があります。
2.補足 Q&A
Q:「安保法制違憲訴訟」って言われていますが、先ず「安保法制」ってなんですか。
A:「安保法制」とは、一昨年平成27年秋の国会で可決された主として自衛隊の任務、権限、活動を強化・加重する一連の法律のことを指しています。
「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」という名の整備法によって改定された自衛隊法、武力攻撃事態対処法、周辺事態法、周辺事態船舶検査活動法、国連平和維持活動協力法など10件の防衛関係法の改定とそれに加えて新しく制定された国際平和支援法をまとめてそう呼んでいます。重要法案10件の改定と新法一つの制定、しかもそれは日本の将来を決定的に左右するというものでしたが、誠実で丁寧な国会審議はなされないまま、また、国会議事堂の周辺を埋めた多数の国民や全国の人々の反対と抗議の声にもかかわらず、同年9月、国会で強行採決により可決されました。
これを私たちは「戦争法」とも呼びましたが、内閣は「平和安全法制」と呼んでPRしています。「戦争」と「平和安全」とではまるで真逆ですが皆さんはどう思われますか。
Q:憲法に違反しているというのはどこですか。
A:第1には、自衛隊が集団的自衛権行使のために出動し、武力を行使できるようにしたことです。
これまで歴代の政府は、我が国の憲法の解釈として集団的自衛権の行使はできないという説明を繰り返していました。ところが安倍内閣はこれを変更して集団的自衛権の行使も限定的であれば憲法解釈としてできるとしたことです。
第2には、自衛隊が海外において地理的な限定もなく、武力の行使に至る危険性の高い活動を行うことができるようにしたことです。
これまでは海外での自衛隊の活動は、他国の武力行使と一体化しないことを基本原則として、他国の軍隊への支援活動は非戦闘地域・後方地域に限定すること、武器使用は自己保存権に基づくものに限定する等の原則を定めていました。これはいずれも憲法の解釈から当然導き出される原則とされていました。しかし、今回の法改正はこれらの原則を逸脱する可能性の高い場所でも、また、他国の軍隊との一体化とみなされる行為等をも可能としているのです。
上記のようにこれまで政府は憲法の解釈として、自衛隊の権限や行為は、我が国に対してなされた武力攻撃を排除するため、すなわち自衛のための必要最小限度の実力を行使することに厳重に限定してはじめて合憲だとしてきたのです。これを「専守防衛」と呼んできました。元内閣法制局長官の宮崎礼壱氏は、この政府解釈は昭和47年から40数年にわたって累次表明し、法律制定、予算の承認等国家政策の基礎となってきたものであり、単なる「解釈」や「説」に止まるものではなく「憲法習律」といってもよい、とまで言われています。
ところが今回の安保法制はこれまでの解釈をいとも簡単に変更して自衛のための最小限度という枠組みを踏み出してしまおうとしているのです。この点が最大の憲法違反と考えています。
それに今回の法改正の特徴に憲法との関係で立憲主義違反という点があります。立憲主義という言葉はマスコミでも大きく取り上げられてきましたから今や誰もが知っている言葉になりましたが、現代憲法の基本理念であり、権力が専断的に行使されることを制限して国民の権利を保障するという原則です。したがって憲法の第一の名宛人は権力行使者であり、権力の行使者は誰よりもまず率先して憲法を守らなくてはならない義務があることになります。憲法99条に定める国務大臣、国会議員の憲法順守義務はこのことを規定しているのです。
ところが安倍政権は、この順守義務に反して一内閣の判断で憲法の恒久平和主義の実質的内容を変更ししたのですから立憲主義違反は明白です。
Q:岡山の裁判と全国の裁判との関係はどうなるのでしょうか。
A:安保法制違憲訴訟は、全国各地でも提起されます。
近県では、大阪、広島、山口等があります。各県に弁護団が結成されてそれぞれ準備が進められています。東京では「安保法制違憲訴訟の会」が結成されて現在訴状の原案等が精力的に検討されています。私たちも各地の情報を共有し、これらを参考にして連携・協力をしていく予定です。東京訴訟のHPもあります。参考にしてください。
Q:どんな訴訟になるのですか。
A:原告となった人が国に対して慰謝料を請求する国家賠償請求訴訟となります。
日本の司法では、法律そのものの違憲性を直接裁判する方法がありません。安保法制が憲法違反であることを確認してくれという抽象的な訴訟を提起しても裁判所からは門前払いになってしまいます。訴訟を提起できるのは、当事者の具体的な権利義務ないし法律関係存否に関する紛争があって、かつ、それが法律を適用することにより終局的に解決することができるものに限られるとされているのです(行政訴訟には例外もあります)。これを事件性といいます。この事件性が満たされて初めて憲法問題も裁判の俎上に乗せることができるのです。そこで安保法制の制定・施行により原告となる国民・市民の具体的な権利や法律上の利益が侵害されたとか法律関係の存否に影響があるとかを証明する必要があります。ここが一番難しいところです。
私たちはこの点につき平和的生存権の侵害、私たちの人格権の侵害、私たちの憲法改定に対する同意権の侵害という三つを柱とした法律構成を検討しています。つまり、安倍内閣による違憲の安保法制の制定・施行によって私たちが有している平和的生存権、人格権、憲法改定同意権が侵害され、私たちは不安、恐怖、苦痛等に慄かなくてはならない生活を余儀なくされているのでその精神的損害を慰藉するための慰謝料を請求する、という法律構成となるのです。
慰謝料の金額は一律に金10万円と考えています。金額そのものが目的ではありませんので訴状に貼る印紙代との関係で10万円にしたのです(高額請求をすると高い印紙代を払う必要があります)。
内閣・国会の行為により私たちが精神的損害を被ったのですから国家に対して金10万円の慰謝料(損害金)を請求する国家賠償請求訴訟という形態となるのです。この中で安保法制の違憲性を訴え、違憲という裁判所の判断を獲得しようというのが私たちの目的です。
Q:そのいうところの権利侵害をもう少し詳しく説明してください。
A:平和的生存権というのは、憲法前文・同13条に定められ、同9条により制度化されている権利です。
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」、「われらの安全と生存を保持しようと決意し」「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という憲法前文の定める権利こそ私たち国民の基底をなしている権利です。安保法制はこの私たちの平和に暮らし安心と安全を保持しようという権利を脅かし、いつ何時他国の戦争に加担したり巻き込まれたりするかわからないという不安と恐怖を与えるものですから権利侵害であると考えています。
人格権は、憲法13条によって「生命、自由、及び幸福追求の権利」として保障されている国民・市民の基本的人権です。安保法制によって自ら戦争当事者になったり、他国の戦争に加担したり、または他国の戦争に巻き込まれたりするようになることはこの人格権を侵害することとなる、と考えています。
憲法改定に対する同意権の侵害というのは、憲法改定の手続きを省略して解釈の変更により実質的改憲をしたことを言います。本来憲法の内容を変更するのは憲法改定の手続きに従うべきことです。そうすれば憲法改定の国民投票が実施されますから私たち国民がその改定に同意するか否かの投票をすることができます。ところが今回の安保法制の改定は憲法解釈の変更というイレギュラーな抜け道的手段を取りましたから私たち国民が国民投票をするという機会がありませんでした。これは実質的には国民の憲法改定に対する同意権を奪ったことになります。そこで憲法改定の同意権の侵害であると主張します。
Q:今後の予定はどうなりますか。第2次募集以降もありますか。
A:6月17日に岡山地方裁判所に第1次提訴、9月21日には第2次提訴を行いました。
※ 現状では第2次までの予定です。第3次以降の盛り上がりがあればベターですが。
その後、しばらくは国との間で準備書面というお互いに自分たちの主張を記載した書面を交換し、法廷で口頭弁論で公開討論するという手順が続きます。
原告の戦争・安保法制による被害や苦痛・恐怖・不安等や自分の思いを記載した陳述書を提出することも必要となるでしょう。そして原告の代表の人に本人尋問として法廷に出て証言をしてもらいたいと考えています。
その後に判決となります。それまでにどのくらいの期間がかかるかは不明です。全国状況もありますし、担当する裁判官の考え方やタイプによって審理の進行はいろいろありますので予測するのは困難です。
Q:原告になったらどんなことをするのですか。
A:先ずはアンケートを行いますのでこれに協力をしてください。
アンケートは原告となった人の思いや意見を聞き、安保法制による精神的被害の実情を明らかにするためのものです。これにご協力ください。
次に弁護士への委任状を作成していただきます。
訴訟は弁護士が遂行しますが原告の訴訟代理人として行うものですから委任状が必要なのです。
裁判の中では、原告として陳述書を書いてもらったり、法廷で証言をしてもらったりすることがあるかもしれませんが、全員ではありません。太平洋・アジア戦争体験者の方、原爆被爆者およびその2生3世の人、自衛隊に勤務する家族の人、基地や安保法制による被害を受けたことのある人あるいはこれから被害を受け易い立場にある人に主として登場していただきたいと考えています。
また、この裁判の目的は、損害金というお金を獲得することそれ自体にあるのではなく(それも大事ですが)、安保法制によって私たちの国の未来を誤らせて再び戦争の惨禍に巻き込まれないようにすることにもあります。ですから安保法制を廃止するための活動の一環でもあります。安保法制を廃止するためには広く国民の意思を集約して国政選挙で安保法制反対派が国会で多数派にならなくてなりません。原告になってくださる人はそういういう人だと思いますからこの裁判を広めてその趣旨を多くに人に訴えてくださるようにお願いしたいと思います。節目には原告団集会や講演会・勉強会も計画していきたいと思いますのでこれにご協力ください。
Q:未成年者でも原告になれますか。また、岡山県外の人はどうですか。
A:未成年者でも意思能力があれば原告になれます。
ただし、民事訴訟法の規定により未成年の人の訴訟提起は親権者の同意が必要となりますので、弁護士への委任状は親権者の名前で作成していただかなくてはなりません。親権者である父や母の了解を取っておいてください。
岡山県外の居住者の人でも岡山地方裁判所に提訴することに納得していただけるなら県内の原告と一緒に参加していただけます。
Q:費用として3000円必要とのことですが、どうしても払わなくてはなりませんか。
A:裁判にはいろいろな費用が掛かります。最初に訴状に貼る印紙代が必要です。
証拠を出すには裁判所と相手にはコピーを渡さなくてはなりませんし、自分たちの手元にもコピーが要ります。原告の皆さんとの連絡のための送料、資料を集めたり、調査・研究をしたりする費用も掛かります。そこで最小限度のものとして3000円の負担をお願いしているので、ご協力をお願いします。ただし、様々な理由で経済的に金銭の負担が困難な方はその旨を事務局に連絡してください。検討をさせていただきます。
Q:ところでこの裁判の判決はどんなものなると考えられますか。
A:正直に言いますと現在の段階での予想される判決はあまり良い判決ではないかもしれません。
それは上記に述べました事件性についてこの事案のような場合は裁判所の主流的傾向は否定的だからです。安保法制等に憲法上の疑義があっても、その安保法制によって国民・市民の具体的権利や法律上の利益が侵害されることはないという見解を取るのです。平和的生存権、人格権、憲法改定同意権を主張しても慰謝料の対象となるような具体的権利侵害は生じないとか、平和的生存権は訴訟上の権利主張ができるような権利ではないという理論に従い憲法判断まで踏み込まないで、原告の請求を棄却してしまうのがこれまでの裁判官の多くが従ってきた考え方です。イラク訴訟でも結論的には全部の裁判所で請求棄却でした。そういう意味では憲法違反の判断をしたうえで慰謝料の支払いも認めるという判決を獲得するには相当の困難があります。
Q:ではなぜ裁判をするのですか。
A:イラク訴訟において名古屋高裁の判決では、イラクへの自衛隊の派遣は憲法9条1項に違反するという判断をしました。
ただし、平和的生存権は具体的な憲法上の権利あると認めてはいますが、イラクへの自衛隊派遣はいまだ平和的生存権を侵害しているとはいえないとして原告の訴えそのものは棄却しました。
しかし、この名古屋高裁の判決は社会に大きな影響を与え、政府は「傍論」であるとして無視する姿勢を取りましたが、その7か月後には政府はイラクから航空自衛隊を撤収することを正式に決定しています。その判断は、イラクの国内の状況、国会情勢、国連安保理決議の期限切れ等の要因があったことは確かですが、この名古屋高裁の判決も影響したと報じられています(2008.1.9中日新聞)。このように一裁判所の判決であっても司法の判断は重要な影響力を持ちます。
また、安保法制が違憲であることは、多数の憲法の研究者、学者も認めていますし、元法制局長官の人々や元最高裁所長官も同様の意見表明をされています。
このように法律の運用や研究に従事している人が違憲だとかその疑いが濃いと言っているのに司法が何もしないのは、司法の任務の放棄だといえます。三権分立の一翼を担い、憲法の番人の役割を与えられている司法が黙していたのでは、何のための司法なのかと非難されても仕方がありません。私たちは法に携わるものの一人としてその責任を果たさなければならないと考えてこの違憲訴訟の遂行を決意しています。今こそ、立憲主義をまもり、平和主義、国民主権、人権尊重という憲法がうたう価値を擁護するという一点で共同して違憲訴訟を提起することが求められているとの思いを強くしています。
多くの市民の皆さんからの訴訟を起こすことへの強い期待と希望が日々寄せられていることを実感しております。私たちは、法律家としてこの期待と希望にしっかりと答える義務を負っていると考えております。人類の普遍の恒久平和主義の理想を掲げ、国際平和を武力によるのではなく人類の正義と知恵にによって保持していこうという憲法の理想を守るためにこの訴訟への参加を呼びかけます。
以上、原告代理弁護団による追加補足
3.サポーター応募
2016/05/31 にいったん原告募集を終了し、 2016/06/17 に第1次提訴を行いました。
2016/09/21 に第2次提訴を行い、これで原告募集は予定終了となりました。
引き続き、サポーターを随時募集しております。
法廷傍聴、資料や情報提供、カンパなど様々な形でのご支援ご協力をお待ちしています。詳細は事務局までお尋ねください。
【安保法制違憲訴訟おかやま事務局】
〒700-0971 岡山市北区野田5丁目 8-11
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