明けましておめでとうございます。少々遅くなりましたが、2025年「み(巳)」年の年頭挨拶をお送りします。
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(「いらすとや」 http://www.irasutoya.com/ の素材を利用しています)
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巳年の新春を迎えて~年頭の挨拶
安保法制違憲訴訟弁護団 金馬 健二 .
. 2025年冒頭は、アメリカ大統領にトランプが就任して、パリ条約の破棄、WHOからの脱退、人権保護の撤廃等、これまでの政策を覆す多数の大統領令に署名することで始まりました。
. ウクライナ侵攻は続いて悲劇が収まらず、ガザ侵攻の結果、夥しい命と生活が無残に奪われ、住民達の生活の場が跡形もなく失われています。世界のあちこちで、人間の尊厳が脅かされています。
. その中で、地球環境破壊は容赦なく進行し、北極の氷が溶け、山火事、洪水による大惨事が頻発し、太平洋の島が沈む危険に曝され、異常気象が人々の生活を脅かしています。
. アメリカファーストは今に始まったことではありませんが、アメリカないしアメリカの富裕層の利益を図る意図があったとしても、これまでは理念やプライドでカバーされてきた抑制的な語り口が、品性の乏しいむき出しの自己主張に変貌し、アメリカが世界中の心ある人の信頼を根底的に失ないつつあります。また、主立ったアメリカのIT企業がフェイクニュースや人権侵害情報のチェックを辞め、誤った情報が拡散することを野放しにすると言うことですので、AIの進化等と相俟って、フェイクニュースが溢れ、ヘイトスピーチの垂れ流し防止も困難になる危険が生じています。
. ベトナム戦争も、イラク戦争もいずれも情報の誤認あるいは偽情報の作出によって始まって、夥しい犠牲者を生みました。しかし、これまでのアメリカの戦争においては、日本政府は、憲法9条を盾にとって、アメリカからの参戦要求を拒み、戦後80年の平和を保ってきました。
. ところが政府・与党は、憲法違反の集団的自衛権を認める新安保法制法の施行を強行し、アメリカとの軍事一体化を着々と進めてきました。同盟国間の集団的自衛の名の下に、自衛隊はアメリカの軍事態勢のもとに組み込まれ、アメリカが戦争をすると、たちまち我が国も参戦当事者となることが想定されており、情報面の統合の実態からも、我が国だけが戦争状態から離脱することはできなくなる体制になっています。
. 台湾有事や北朝鮮有事が喧伝される中で、戦争態勢移行の準備が進められている昨今の状況下では、情報操作ないしは情報誤認、あるいは現場での偶発事件によって、いつ戦争状態に突入しても不思議ではありません。いったんそのような状況になれば、後戻りはできず、夥しい数の人命が失われる悲惨な結果となります。
. 私達国民は、世界の信頼を失っている自国ファーストのアメリカの戦争に参加して、その先兵として血を流す役割を果たすことを本当に納得しているのでしょうか。
. 第二次大戦の教訓から、戦後、武力の行使を抑制し、人類の平和的生存権を確保する方向に向かって、世界が歩み始めました。その中で、我が国において、戦争放棄を高らかに謳う先駆的な平和憲法が制定され、我が国が憲法を実践する平和大国として、世界から信頼されてきました。その結果、我が国民は、戦争によって誰一人として命を失うこともなく、命を奪うこともない誇るべき80年の平和を保ってきました。
. ところが、遺憾ながら、歴史の教訓を学ぶことなく、自国あるいは自分ファーストの利益を臆面もなく貪ることを恥じない権力者が跳梁する時代遅れの国家が出現し、戦後の人間尊厳の追求を図ってきた流れを押し戻す反動的な流れが生じています。私達もまた、愚かにもその反動的な流れに従うのでしょうか、流されて破滅に向かうのでしょうか。
. 私達は、今こそ、アメリカから独立して、日本独自の立場で、外交を通じて各国に働きかけ、歴史の教訓を踏まえて人間尊厳を訴え、人類の平和的生存権の保障を訴えるべき立ち位置にいるのではないでしょうか。世界に冠たる日本国憲法が私たちの最大の武器になるチャンスが訪れていることを確信しています。
. 日本国憲法前文を改めて読み返してみましょう。
. 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと務めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。(憲法前文②項)」「われらは、いずれの国民も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。(憲法前文③項)」「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。(憲法前文④項)」
. 内閣総理大臣、最高裁判所等国家機関に属するものは、この憲法を遵守し、実践しなければならない(憲法99条)はずです。
. 内閣総理大臣や裁判官がそのような憲法上の義務を果たすためには、「戦争をする国」にした憲法違反の新安保法制法を廃して、平和大国たる地位を回復することが不可欠です。
. 残念ながら、劣化した裁判官にはもはや期待できないようですから、国民が、新安保法制法を廃止し、アメリカとの軍事一体化からどうにかして抜け出して、平和大国たる地位を回復する議員を選び、あるいはこれを実現する内閣を生み出すしかないと思われます。それによって、私たちの命を守り、ひいては人類の尊厳を守ることを実現したいものです。
. 本年はそのような方向に踏み出すための「み(実)」のある「み(巳)年」にしたいものです。